Zancolliの分類攻略

難解なZancolliの分類について解説&傾向分析していきます!

公開日:2023/08/26 

Zancolliの分類

頸髄損傷の問題は毎年のように専門分野に出ています。

しかも、そのほとんどが実地問題ですから、一問につき3点です。

ポイントになってくるZancolliの分類を攻略しておきましょう。

 

はじめに

ザンコリの分類の特徴として

 

「登場する筋」と「分類の仕方」が独特で、規則性が薄い。

 

これに尽きます。

だから覚えにくい。

 

恐らくは神経の走行やダメージの受けにくさ、腕神経叢による多髄節からの関与の有無といった構造上の問題で機能残存するんだと思われます。

だから

○○神経だからごっそり生きている、とか、障害されている

といった規則性が生じにくいんじゃないかと思います。

 

対策としては大きく2つ。

 

①根性で理解する

②国試に特化した内容を押さえる

 

順番に説明していきますが、まずは②を先に説明します。

①の根性から入ると挫折しそうになりますから・・・。

また、後半はイメージしやすくなるような動画を貼ってます。

ぜひ最後までお付き合いください。

 

国試に特化した内容を押さえよう!

国試に頻出のZancolliのレベル

ややこしいからなのか、重要だからなのか、

とにかく国試ではC6に関する問題がほとんどです。

ざっと調べただけでもC6レベルの内容だらけ。

 

PT専門ではこの通り。

第46回PT午前13・・・C6

第46回PT午後16・・・C5

第46回PT午後17・・・C6BⅢ

第48回PT午前17・・・C6

第48回PT午前34・・・各レベル

第49回PT午後16・・・C6BⅡ~Ⅲ

第49回PT午後30・・・C6

第50回PT午前09・・・C6A

第50回PT午後10・・・C5

第51回PT午前33・・・C5

第52回PT午前19・・・各レベル

第54回PT午後11,12・・・C6BⅡ

第54回PT午後15・・・C6

第55回PT午後18・・・C6

第56回PT午後41・・・各レベル

第57回PT午前15・・・C6

第57回PT午前44・・・C7

第58回PT午前11・・・C6BⅡ

 

OT専門でも。

第46回OT午前08・・・C6BⅠ

第46回OT午後08・・・C7A

第47回OT午後10・・・C6BⅢ

第48回OT午後10・・・C6BⅢ

第49回OT午前09,10・・・C6A

第49回OT午後09・・・C7B

第49回OT午後10・・・C6A

第50回OT午前11・・・C6BⅢ

第51回OT午後03・・・C6A

第51回OT午後04・・・C6BⅠ

第52回OT午前28・・・C6BⅢ

第52回OT午後08・・・C6BⅡ

第53回OT午前36・・・C6

第53回OT午後07・・・C6A

第54回OT午前07・・・C6BⅠ

第55回OT午後11・・・C6A

第56回OT午前03・・・C6A

第57回OT午前12・・・C5

第57回OT午後08・・・C6BⅢ

第57回OT午後35・・・(C4)

第58回OT午前08・・・C7

 

稀に出ない年もありますが、2問以上出る時もありますね。

Zancolliの分類を押さえておかなければ、かなり厳しい事になると心得て下さい。

また、C6だけ知っていれば良いというわけではありません。

C6の出る可能性は依然として高いですが、C5やC7もちらほら出てきています。

ただ、やはりC6を中心に学ぶのが良いと思います。

その過程で、他のレベルと比較するので、ついでに押さえていきましょう。

 

国試で着目されるポイント

また、国試でよく問われるポイントがあります。

 

筋肉でいえば

上腕二頭筋

回内筋群(腕橈骨筋と円回内筋)

上腕三頭筋

手関節背屈筋群(長、短橈側手根伸筋)

 

重要単語としては、

テノデーシスアクション

プッシュアップ

手指の屈曲拘縮

 

これらは、各項目で出てきますのでその時に解説します。

 

根性で理解しよう!

さて、いよいよ根性編です。

やはりある程度はアタマに叩き込まなければ話になりません。

せめて理解しやすい流れを以下に紹介します。

 

グループ

まず、ザンコリは大きく4段階のグループに分かれますね。

C5、C6、C7、C8の4グループ。

 

それぞれ着目しているのは、抗重力だと考えてみてください。

 

腕神経叢の主な支配は肘以遠です。

最も近位の関節から考えていきましょう。

 

まず、肘です。

大半の上肢の活動、例えば食事をする際、手を口元に挙げるのは屈曲の動きです。

第1のグループ、C5では「肘の屈曲」が焦点となります

 

続いて、手関節。

肘を曲げて手が上がってきたら、今度は手首を挙げなければなりません。ね!

既に若干強引になってきましたが続けます。

また、後述しますが手関節は伸展(背屈)は重要な機能です。

第2グループは「手関節の伸展」です。

 

さらに指です。

こちらも重力に抗って指を伸展できるかという感じでお願いします。(懇願)

第3グループは「手指の伸展」です。

 

最後だけは例外。

今まで重力に抗ってきました。

最後は、そのなかでいかに作業をするか、というイメージです。

第4グループは「手指の屈曲」

 

 

ここまでが、まずはザンコリの大まかな枠組みです。

さらに「サブグループ」があり、これがいよいよ難解な分類です。

なるべく解説しますので、理解の手助けになればと思います。

 

サブグループ

さっそく第1グループ(C5)

肘屈曲のメインと言えば上腕二頭筋、ここまでは良いかと思います。

ここで1つ目のポイントです。

上腕二頭筋の作用は構造上、回外を伴いますね。

しかし、大半の上肢の活動では、手掌は下向き、つまり回内位です。

そこで肘屈曲の中では腕橈骨筋の機能の有無が重要となります。

なぜなら、

 

腕橈骨筋の作用

 ⇒肘の屈曲、前腕の回内・回外

 

と回内も含まれるからだと思います。

とはいえ、回内メインの筋でもありません。

回内に関しては、次のC6からが本領です。

 

 

第2グループ(C6)

最もややこしい、ザンコリの鬼門です。

基本的機能筋は、長・短橈側手根伸筋。

これは分かる。手関節伸筋ですからね。

問題はサブグループ。

手関節伸展の強さでA,Bに分かれまして、

さらに円回内筋が効くか、

橈側手根屈筋と上腕三頭筋が効くか、と分類されています。

 

・・・覚えて下さい。

解説不能です。C6はこういうものだ、としか・・・。

 

ただ、大変重要になってくるレベルではあります。

まず手関節伸展はテノデーシスアクションに関わるからです。

 

テノデーシスアクションは筋や腱の走行・構造を利用した動作。

手関節が屈曲で手指が開き、伸展で閉じます。

これは健常者でもその傾向はありますね。

脱力して手関節を掌屈したり背屈したりしてみよう。

で、C6レベルは手指の伸展も屈曲も随意的に不可能です。

テノデーシスアクションで代償する事で物を掴む事ができるわけです。

よって、手関節伸展筋群は超重要です。

C6のAなら、手関節伸展が弱い⇒テノデーシスアクションが使えない。

C6のB以降は手関節伸展が強い⇒テノデーシスアクションが使える。

これは大きな違いです。

 

更に、先ほども少し触れましたがC5で上腕二頭筋が優位だと自然と回外します。

しかし機能性を上げるには回内位もとれるようになった方が良い。

なぜなら大抵の作業は回内位で行うからです。

それに普通は作業中、モノって手よりも下にあるでしょ?

紙も、鉛筆も、スプーンやフォークも。

回外位では、これらを拾うところから困難です。

回内筋群、C6では円回内筋が大事。

これがBⅡレベルです。

 

※余談

なぜ方形回内筋じゃないかは・・・分からなかったです。

ただ、国試内で円回内筋か方形回内筋かを問われる事はほとんど無し。

なんなら「円」も無視して「回内筋」でも大丈夫なぐらい。

 

そして上腕三頭筋。

こいつはプッシュアップに、極めて重要です。

上肢支持で尻が挙げられれば、日常的な移乗が自立できるレベルです。

ただ上腕三頭筋がメインで効いてくるのはC7で、C6から効き始めます

ここ、ちょっとややこしいですが・・・。

ともかく、これにより最低限のADLが可能となります。

BⅢレベルの話ですね。

 

※余談

国試内におけるZancolliの分類では橈側手根屈筋は空気。

特に触れられる事は無いです。

 

一口にC6と言っても、どのレベルかによってかなり違いますね。

このあたりが国試問題向きなレベルの理由かもです。

 

 

第3グループ(C7)

基本的機能筋は

 

(総)指伸筋、小指伸筋、尺側手根伸筋

 

手指伸展可能群ですね。

「尺側手根伸筋も入ってるやん」となりますが、あまり問われることは無いです。

まぁゼロでも無いので覚えなくても大丈夫とは言いませんが・・・。

C6の手関節伸展筋群が、C7で更に強化、ぐらいに思ってください。

 

サブグループは、

A:尺側指完全伸展可能

B:全指伸展可能

 

手指に関しては尺側が残存しやすい様です。

これは第4グループ(C8)でも使える法則です。

C7Bの「母指の伸展は弱い」は、もうスルーで良いかも・・・。

 

 

第4グループ(C8)

「手指屈曲可能」で、基本的機能筋は・・・

 

示指伸筋、長母指伸筋、深指屈筋、尺側手根屈筋

 

ほぼ手指屈曲筋じゃない。

 

こういう所がザンコリの困ったところです。

どーしてこういう事が起こるのか。

 

機能的な話だと、

C7までの「手指の屈曲が出来ない

C8からの「手指の屈曲が出来る

えらい違いですね。

これは、

「指の伸筋は主にC7ぐらいから出来始める」と、

「指の屈曲は主にC8ぐらいから出来始める」の差なわけですが、

腕神経叢の影響で「C7」とかいうピンポイントな話じゃなくて「C6~C8」みたいな幅があるんです。

だから、「C6から出来始める」事は

「C7やC8残存では更に出来る

「活動できる筋が増える

「よりしっかりと出来る」

という感じです。

徐々に動かせるようになるので、こんなにややこしいのね・・・。

 

・・・なので、、、

・・・覚えるしかない、です。

 

サブグループは以下の通りですが

 

A:尺側指完全屈曲可能

B:全指屈曲可能

  Ⅰ浅指屈筋の機能なし

  Ⅱ浅指屈筋の機能あり

 

まぁ、ここ10数年、C8レベルが問われたことはありません。  

 

 

ちなみにですが、

ここまでC7、C8の手指の伸展・屈曲はいずれも「外来筋群」です。

手外筋とか外在筋とかとも呼ばれる奴らです。

手内在筋群が主要に動くのはTh1なので、ザンコリのレベルには登場しません。

(C8から動き始める事もあるので、多少は動くかもですが。)

Th1残存なら、上肢機能は完全に可能です。

よって「四肢麻痺上肢機能分類」であるザンコリには不要なのでしょう。

 

動画で学ぼう!

国試頻出の「C6レベル」

実際に診た事はありますか?

運が良ければ実習で出会うという事もあるかもですが、そうでない方もいると思います。

もしまだ実習の予定がある方は「頚髄損傷の方を見学したい」と申し出るのもアリだと思います。

C6で無くても、一度でも見ておくとイメージが全然違います。

特に食事や移乗の場面を見ておくと良いでしょう。

 

文字だけではなかなかイメージしづらいと思いますし、

「一般的に獲得可能な機能」をここに羅列しても仕方ないので、

ネットを駆使して勉強してみましょう。

 

パンテーンのCMで頚損の女性が出ていたのを見た事ありませんか?

彼女は頚損女子しょうこちゃんとして活躍するYouTuberでもあります。

 

こうしてオープンにしてくれているので、勉強のために有難く見させて頂きましょう。

観察する限り、C6レベルだと思います。

興味があれば他にも見て頂ければと思いますが、2つ程ご紹介。

1つ目は朝の起居、移乗、排泄関連動作、整容(手洗い)の動画。

実況・解説の中でも「床から車いすへの移乗は自力で出来ない」との事。

これはC8レベルで可能になるので、やはりそれ以下と思われます。

肘は屈曲してますね。C5以上です。

ベッドのリモコン操作もC5で可能。

4:33頃、靴を履く動作。

膝下に手を入れて膝を立てている際、回内位での屈曲ですね。

さらに、手関節を伸展させて足が滑り落ちないようにしています。

手関節背屈が強く、円回内筋機能ありと思われます。

C6Bはあるんじゃないかと。

6:19での解説で「私ぐらいのレベルで側方移乗はあまりしない」との事。

側方移乗はC7レベルの獲得です。

動画の通り、一般的には前方移乗なのだと思います。

元々の器用さの影響や麻痺の状態は画一ではないので、

実際にはこのようにレベルと動作に乖離が起きるのでしょう。

逆に、起居は苦手の様です。

C6Bなら仰臥位からの起き上がりも到達可能なADLとされています。

柵を使えばそこそこ起き上がれている様にも見えましたが・・・

動画ではギャッジアップを使用していますね。

 

こちらはなんだか楽しそうな動画。

インスタントラーメンを作っている様子です。

車いす駆動はC5で室内なら可。

確かに、動画でもスイスイと動けている感じです。

注目は3:15あたりの水を汲んでいるシーン。

カップの持ち方、かなり手背屈位です。

明らかにテノデーシスアクションを活用して把持しています。

あと、お玉や粉末の袋の把持の様に示指・中指で挟む事も多いんですね。

細い物や向きによっては指の股の方が把持性が高いのでしょう。

手指の伸展は不可っぽいので、やはりC7レベルでは無いと思われますが・・・。

屈曲拘縮があるかもですが、動画からは判別できません。

卵の殻むきの際、母指だけは伸展している場面が映っています。

袋から麺を出したり鍋に入れる際も、そこそこ伸びている様には見えます。

拘縮のせいで伸びないのか、C6レベルだから伸びないのか。

過去問でも「手指屈曲拘縮以外の関節可動域制限はない。」等の記載があります。

実践でも大事ですね、何が原因で出来ないかの判別。

フォークでの食事はC6Aレベルで可。

 

という事で、動画を見ながらレベルを考えてみるのも良いかと思います。

 

まとめ

POINT
      
  • Zancolliの分類は「登場する筋」と「分類の仕方」が独特。
  •   
  • 国試に良く出る「C6レベル」をまずは押さえよう。
  •   
  • それ以外も根性で覚えること。
  •   
  • 動画など活用してしっかりイメージできるように。
  •